広告代理店から愛を込めて

心筋梗塞になった40歳広告代理店の人のブログ

KY=絶対悪の論調の中で

なげえww
この人、世間の趨勢にあえて反対意見を投じる傾向はあるような気がするものの。
面白い視点。

ぶっちゃけ小難しい話はどうでもよくて、最後の2パラグラフが面白い。
(いやまあ正確には小難しい話も、ストーリーの中では生きているのですが)

なんもかんも、否定からは何も生まれないですよねー。
若造のたわごとだ、と思われてもまあいいや。そう思うんだもの。今は。


池田信夫 blog』

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空気を読むな
2007-12-23 / Culture

宮台真司氏が、「KY」と日本の論壇の幼児性を結びつけて論じているが、私も同感だ。
日本のメディアは空気によって党派がわかれ、
慰安婦でも沖縄でも、初めに結論ありきで、歴史的事実におかまいなしに、
朝日=岩波ムラと産経=文春ムラにわかれて罵倒の応酬が続き、
論理的な論争が成立しない。
たとえば『諸君!』に執筆すると、文春ムラに入ったとみなされ、
そっち系の雑誌からばかり注文が来るようになる。

こういう無人称の空気こそがかつて日本を戦争に引きずり込んだのだ、
と指摘したのは山本七平だが、その原因を彼は分析しなかった。
私は、この謎を解く鍵は、山本が空気と関連して論じた水にあると思う。
といっても彼は「場の空気に水を差す」というように
空気=雰囲気と対立する通常性の原理として水をとらえたのだが、
ここで私がいうのは文字どおりの水、すなわち農村の水利構造である。

われわれはつい忘れがちだが、日本では50年前まで人口の半分以上が農民だった。
日本の高度成長を支えたのは、
こうした農村から出てきた労働者(その最後が団塊の世代)だから、
彼らの行動規範は基本的に農民のエートスだった。
モンスーン地帯の農業の最大の問題は水の供給である。
特に日本は国土の17%しか農地がなく、しかも傾斜が急で米作には適していない。
そこで米作を行なうために共同で開墾と灌漑工事が行なわれ、
放置すると海に流れてしまう水を貯水し、それを田に引く複雑な水路が作られた。
そこを流れる水が途絶えると稲は枯れてしまうので、
緊密な共同作業で水を管理しなければならない。

そもそも各戸ごとの田というのは、江戸時代後期までなかったといわれる。
「池田」とか「村田」という姓が示すように、田は村全体のコモンズで、
その収穫は各戸に平等に分配された。
田が各戸ごとに分割されるようになってからも、
村内で水の配分をめぐって争うことは固く禁じられ、
そういう秩序を乱す者は文字どおり村八分によって排除された。
このコモンズとしての水を守るのが、村民の共有する空気としての掟だった。
自由になるには村を離れるしかなく、それは商人などとして成功する場合もあったが、
ほとんどの場合は餓死を意味した。

こういう「農耕民族論」は、
かつて日本的経営の後進性を説明する論理としてよく使われたが、
経済学者はこういう「文化的決定論」をバカにし、
ゲーム理論などで合理的に説明するのが80年代以降、流行した。
しかし最近の行動経済学進化心理学の実証研究が示すのは、
遺伝的・文化的環境の影響のほうが「合理的決定」などという仮説より
はるかに人間の行動を説明する因子として有力だということである。

だから、KYといわないとわからない空気の希薄化の原因は、
かつて農村から出てきた団塊の世代と、その子孫の団塊ジュニア世代のギャップにある。

農村で育ち、会社を第二のムラとして、毎朝の朝礼などによって水を共有し、
他の村との「水争い」では結束して闘う強い倫理を埋め込まれた世代が、まもなく引退する。
この「水不足」は、単なる労働人口の不足よりも深刻な、「2007年問題」を引き起こす可能性がある。
それは労働者を内的に駆り立てる労働倫理の欠如だ。

しかし私は、これを解決するのが宮台氏のいうような「新しい知識人」だとは思わない。
そんな知識人の特権性は、マスメディアの没落とともに失われたからだ。
かといって「群衆の叡智」なるものも、
今のウェブの混乱状態をみればわかるように、当てにならない。
むしろ可能性は、空気の読めない若者が増え、
会社にべったり埋め込まれた水利構造を脱却することにあると思う。

今はフリーターとかニートとかネガティブなとらえ方しかされていないが、
彼ら団塊ジュニアが本気で親の世代に「戦争」を仕掛けることが、私の希望だ。

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