ドアを閉めた途端、刺すような寒さに責めたてられた。
久しぶりに涙が出た。
あれだけ考えたはずの「答え」が、
いざ正面に立った時に、立脚点をなくす。
感情の前に、理性はかくも弱いのか。と思い知る。
たぶん、答えなんかなくて、
自分は、何かを選んだことで、何かを捨てた。
捨てたものは明らかなのに、何を選んだのかがわからない。
戦略屋が聞いて呆れる。
ただ、確実に「止まっていた」。
その状況をなんとかしたかった。
身勝手でいい、と思った。
それくらいがちょうどいいんだ、と。
おそらく2度と歩くことのない駅までの道で、
どんな感動的な映画でも泣くことのない目が涙し、
皮肉に限りなく近い笑いが止まらなかった。
ひとに涙させること。
その重さを知れたんだ。
そして、忘れずにいよう。
ひとの痛みが、こんなにも自分を痛くさせることを。
東野圭吾の『白夜行』。
ヒロインの雪穂が、主人公と肌を重ねたとき、
「ひとってこんなに暖かいんだ」
と言っていた。
重ねた出会いは、何かを残す。
そして、ひとは出会わずにはいられない。