広告代理店から愛を込めて

心筋梗塞になった40歳広告代理店の人のブログ

ジョージアのマーケティング。


面白いのでそのまま転載。
これ↓なんか、本国の影響をままうけてるんだな。。

日本で消費される缶コーヒーは年間100億本。金額ベースでは8000億円に達します。
清涼飲料メーカーの間では「缶コーヒー市場を制する者が清涼飲料市場を制する」と言われるほど重要なカテゴリーです。

 このため、コカ・コーラジョージア」、サントリー「BOSS」、キリン「FIRE」、アサヒ飲料WONDA
といったトップメーカーの新製品開発や、広告・販促施策における競争は熾烈(しれつ)なものがありますよね。


ブランド力でBOSSに負けていたジョージア


 現日本コカ・コーラ会長の魚谷雅彦氏が1994年に同社に入社した時、
まず早急な建て直しを求められたのが「ジョージア」でした。
ジョージアは当時、矢沢永吉さんをコマーシャルに起用したサントリー「BOSS」の人気に押されて、
じりじりと売り上げを落としていたのです。


 当時のジョージアの市場シェアは43%。
トップブランドの地位は保っていました。
また、ジョージアの「認知率(助成認知率)」は90%以上。
実質、日本人なら誰でも知っているブランドと言えますね。

 ところが、「缶コーヒーと言えばどのブランド?」という質問で確認する「非助成認知率」では1位がBOSS。
ジョージアは2位だったのです。
つまり、当時のBOSSのシェアは10%以下だったにも関わらず、
ブランド力ではBOSSに負けていたというわけです。

 当時、消費者の購買行動が変わり始めていました。缶飲料は従来ほとんど自販機で買われていました。
現在でも自販機の約半数はコカ・コーラが展開していますが、自販機を通じた強力な販売力が同社の強みの1つ。
ジョージアがトップブランドになれたのも、同社製品しか買えない自販機のおかげです。

 しかし、コンビニが普及したため、缶飲料が自販機ではなく店舗で買われる機会が増えてきたのです。
さまざまなブランドが並ぶコンビニの場合、ブランド力が強い方が勝ちます。

 要するにコンビニなどの小売店では、ジョージアではなくBOSSを選ぶ人が増加した。
結果的に、ジョージアの全体的な売り上げ低下につながっていたのが1990年代中ごろの状況でした。


ブランド力低下の原因は広告


 では、なぜブランド力が低下していたのでしょうか?

 魚谷氏とジョージアのチームがその原因を検討した結果、「広告に問題あり」という結論になったそうです。

 当時、ジョージアの広告はアトランタ本社が主導していました。
米国では、「ジョージア」はブルーカラー(肉体労働者)の飲み物と認識されていました。
そのため、当時の広告では「マッチョな体つきの港湾労働者が汗だくになって働いた後にジョージアをおいしそうに飲む」
といったストーリーが展開されていたのです(ジョージアは日本発の飲料ですが、やはり本国の意向に大きく左右されるんですね)。

 もちろん、日本でもガテン系の労働者の缶コーヒーの消費量が多いのは確かです。
しかし、たとえ工場などで働いていたとしても、多くの日本人はブルーカラーとかホワイトカラーといった区別はほとんどしませんし、
むしろ企業に勤める「サラリーマン」という意識が強い。
米国的ブルーカラーに向けたマッチョな広告では、日本のサラリーマンの共感をあまり得られなかったのも当然かもしれません。


何のために缶コーヒーを飲むのか?


 そこで、魚谷氏とジョージアチームは、新しい広告施策のコンセプト作りに着手します。

  1994年はバブル崩壊後で企業のリストラも本格化し始めたころ。
サラリーマンは厳しい現実に直面していました。
このような状況では、「頑張れ、サラリーマン」と鼓舞するのは空虚であり、
むしろ「ちょっと一息ついて休みましょう」というメッセージを発信するのが、時代の空気に合っていると考えられました。

 実際、缶コーヒーの利用実態調査でも「リラックスするために飲む」という項目が、缶コーヒーを飲用する目的の第1位になっていました。

 ただし、当初は男性向けの商品ということで、男性目線で展開するクリエイティブを予定していたところ、
予期せぬトラブルによって練り直しを余儀なくされた中から出てきたのが、
「女性が男性に優しく『お疲れさま』と語りかける」という切り口だったのです。

 この語りかける女性役として20代、30代、40代それぞれの年代に受ける女性タレントが3人選ばれましたが、
20代向けとして選ばれたのが、当時はまだそれほど知名度のなかった飯島直子さんだったというわけです。

 1994年、「ジョージア 男のやすらぎキャンペーン」と題して始まったキャンペーンは大きな反響を呼び、
特に飯島直子さんのポスターはすぐにはがされてなくなってしまうほどの人気を集めます。

 そして、翌年から始まった、缶に張られたシールを集めて応募すればパーカーなどがもらえるプレゼントキャンペーンは
初年度3400万通、翌年は4400万通という驚異的な応募数を記録したのです。

 前回書きましたが、ちょうどこの最盛期のジョージアキャンペーンの某プロジェクトに関わっていたので、
当事者に近い立場で現場の熱気を感じることができたのはとてもいい経験だったなと思います。


シェアが10ポイント伸びる


 さて、このキャンペーンの成功のおかげで、ジョージアのシェアは3年後に53%と、10ポイントの伸長を果たします。
非助成想起率でも、BOSSを抜いて 1位に返り咲くことができました。
時代の空気を的確に読み、ターゲットの心に刺さる、また共感させることのできる広告・販促施策がどれほどの効果があるのか、
このジョージアの1990年代の復活劇はとても参考になると思います。

 なお、ジョージアはその後、再び低迷期を迎えますが、
2000年から始まった「明日があるさキャンペーン」で再び勢いを取り戻したのは、皆さんの記憶にも新しいでしょう。

 実は、現在のジョージアの市場シェアは30%強に落ち込んでおり、またまた厳しい状況にあります。
1990年代よりも現在はさらにコンビニの存在感が増していますし、冒頭に述べたように、
サントリー以外の飲料メーカーもかなり力をつけてきて、
WONDAの「金の微糖」といったユニークな商品開発や広告展開が成功しているからでしょう。

 ジョージアの3度目の復活はあるのか? 
缶コーヒー市場を巡るトップメーカーの攻防は、目が離せない感じですね。(松尾順)
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0912/11/news022.html